あなたはマインドフルネスとはどのようなものかご存知でしょうか?
「最近よく話題になっているヨガとか瞑想のことでしょ?」
といった理解ではありませんか?
近いのですがちょっと違います。ヨガや瞑想はマインドフルネスという大枠の中にありますが、ヨガや瞑想がマインドフルネスではありません。
簡単にマインドフルネスを表現すると、脳科学的に効果が実証されている精神トレーニングです。主にヨガや瞑想を中心としていますが、宗教色を排除している部分が特徴です。なので、宗教独特の教義等はありません。
本来、ヨガや瞑想は東洋を中心に広まっていたものですが、科学的裏付けがなかったのと宗教色の強さから欧米では波及してきませんでした。
ところが、fMRIというリアルタイムで人の脳活動をスキャンできる医療機器が普及したことで、ヨガや瞑想の効果が科学的に裏付けされたことと、宗教色を排除したことで、欧米の企業で爆発的な広まりを見せ、東洋に逆輸入されてきた経緯があります。
要はヨガや瞑想の効果的なテクニックを宗教的な教義などに縛られずに、誰もが身に着けて行こうという考え方です。合理的な欧米らしいですね。
ひと昔前までは神秘的で怪しいと捉えられていたヨガや瞑想が、ここまで世間一般に受け入れられたのはこの合理性を追求する欧米がお墨付きを下したからという所です。
この章ではマインドフルネスとはどのような効果をもたらすものかを具体的にお伝えさせて頂きます。
1.マインドフルネスの脳科学的な効果
fMRIはリアルタイムに脳の血流を測定することが出来る医療用機器です。fMRIのおかげでマインドフルネスの認識が東洋の胡散臭い自己啓発レベルから変わって行きました。そして、一気に科学者の研究対象となっていったのです。
この項目ではマインドフルネスを行うことで脳がどのように変化して行くかということを具体的にお伝えしていきます。
①後帯状皮質
マインドフルネスには脳の後帯状皮質を鎮静化させる効果があります。後帯状皮質とは脳の真ん中に位置する部分で、過去をくよくよ思い悩んでいたり、心がさまよっている時などに活性化します。ようは、後帯状皮質が活性化するとあーだこーだと思い込みや思考にとらわれてしまい、ストレスが溜まって行くということですね。
逆にマインドフルネスで後帯状皮質が沈静化していくと、ストレスの原因となる思い込みや思考のとらわれがなくなり、心に落ち着きを取り戻します。
余談ですが、マインドフルネスを行うと、終わったあともその効果は持続して行くことが近年の研究では明らかになっています。
②脳の可塑性(かそせい)
可塑性とは簡単にお伝えすると、使えば使う程パワーアップするよという事です。fMRIによって脳は可塑性があることが証明されました。従来まで、脳の構造は幼少期に固定され、それ以降、神経経路は一生涯成長しないものだと考えられてきました。もし、変わるとしたら加齢によって脳が退化する時だけだと認識されていたのです。
しかし、脳の神経経路は生きている限り発達し続けて行くということが証明されました。マインドフルネスを行うことで、集中力がましたり、ポジティブな感情をより多く持つ時間が増えたり、脳の老化を遅らせることも実証されて来たのです。
マインドフルネスを行い続けることで脳は確実にバージョンアップしていくことが科学的に証明されているということです。
③扁桃体の縮小
話が通じない相手にカーッとなって怒ったり、仕事のミスを叱られるのが怖くて言い出せなかったことなどがあると扁桃体は活性化しアドレナリンが放出され血圧が上がって来ます。このような経験はあなたにも少なからずあるのではないでしょうか?
このように状況下で扁桃体が活性化することを闘争・逃走反応と言います。私たちの祖先が原人だったころは闘争・逃走反応は種の繁栄に大いに役立ちました。瞬間的に血流をあげ、敵と戦うか逃げるかに全神経を集中させるのですから当然ですよね。
でも、現代社会で生活する私たちには闘争・逃走反応は無用の長物です。マインドフルネス瞑想を行い続けるとこの扁桃体自体を縮小させていくことが確認されています。よって、闘争・逃走反応が起きにくい脳の構造に切り替わって行くということです。
マインドフルネスとは継続的に行うことで、私たちが感情的になってしまうことから遠ざけてくれます。
④灰白質が増える
実験結果では、記憶、自己認識、ストレス、共感などと関連する部位に顕著な変化が見られた。この実験では、16人の参加者の脳を3回に分けてスキャンした。まず8週間のMBSR(瞑想)を始める前、次に受講期間中、そして受講後だ。1日平均27分間のマインドフルネス瞑想をした被験者たちは、ストレスが明らかに減ったと報告した。そして、彼らの脳はその言葉以上に多くを語った。実験前と実験後、2か月を経た脳の写真は、学習、記憶、自己認識の中枢となる海馬部分で灰白質の密度が増加していたのだ。 マインドフル・ワークより引用
このようにマインドフルネス瞑想を行い続けることで、灰白質が増えることもfMRIで証明されています。瞑想を継続的に行うことで、学習と記憶処理、感情の制御、自己言及的処理、他者の視点に立つ能力に関わる脳の部位にある灰白質が増えることが分かって来ました。
また、マインドフルネスが心に及ぼす影響は一通りではなく、かなり多いということも近年の研究では明らかになりつつあります。
⑤大脳皮質が厚くなる
大脳皮質の活動を測る1つの方法は、その厚さを計測することだ。ハーバード大学の研究者サラ・ラザーとその同僚たちは2005年の研究で、瞑想と脳の構造変化の関係について仮説を検証した。ラザーはfMRIによるスキャンによって、生活のあらゆる場面でマインドフルネスを実践するインサイト・メディテーション・センターのアメリカ人ヴェテラン瞑想者の大脳皮質の厚さを計測した。そして、それを瞑想しない一般の人と比較した。その結果、長い間マインドフルネス瞑想をしてきた人は、感覚入力を処理する皮質領域が厚いことが分かった。瞑想が脳の構造を変えるという初期の証拠の1つとなる結果だった。実験はまた、加齢によって前頭皮質が薄くなっていくのを日常的な瞑想が遅らせる可能性も示した。
マインドフル・ワークより引用
大脳皮質とは脳の表面分部で進化における脳の最も新しい部位です。大脳皮質は様々な部位に分類することが出来ますが、そのうちの1つである前頭前皮質は瞑想によって活動を盛んにする部位です。
おもに高次の思考の多く(判断、決定、計画、識別)は前頭前皮質によって行われています。また、思いやりや共感、やさしさなどを感じる時に活性化する部分でもあります。よって、瞑想を行うことで、人が現代社会を生きて行く上で必要不可欠な能力が磨かれていくのです。
マインドフルネスとは脳力を上げて行くための科学で証明されたエクササイズであると言えます。
2.マインドフルネスの精神的な効果
私は早朝と夕方にマインドフルネス瞑想を1時間づつ、計2時間行うことを去年の9月より実践しています。実践する中で感じた大きな変化を3つお伝えしていきます。
①ストレスを軽減する
マインドフルネス瞑想を行い続けて最も効果を感じている部分です。マインドフルネス瞑想を行う前までは、毎日の仕事や生活でたまるストレスを発散するために、毎晩のようにお酒を飲んでいました。しかし、お酒を飲むことはストレスの根本的な解決にはなりませんでした。
お酒を飲んでいる時だけ1次的にストレスを忘れられても、根本にストレスが残り続けているため、お酒を飲んでいない時は常にストレスがかかり続けていたほどです。
しかし、マインドフルネス瞑想を行ってからは本当の意味でストレスが発散されて行っています。ストレスが自分の内に湧き起ったら評価・判断せずにその感覚を感じることを繰り返すと、負のエネルギーが急に軽くなり自然と消滅して行ってしまいます。
日々の生活でストレスを感じても、瞑想を行うことで根本から消えて行くので、大きく膨れ上がっていくことは滅多になくなって行きました。
②集中力アップ
マインドフルネス瞑想の効果として集中力アップも外せません。私自身、フロー状態になることが比較的増えて来ました。フロー状態とはやっていることが楽しくて一心不乱の状態です。ブログを書くときもフロー状態で一気に書き上げてしまうことも出来るようになってきました。
また、マルチタスクではなく、ひとつのことにじっくりと取り組むことが増えてきたため、マインドフルネス瞑想を行う以前よりも、ひとつひとつの物事を深く探求できるようにもなって来ました。表面ではなく深層までたどり着けることが増えて来たような感覚です。
③思いやりの心が身につく
以前までは自分視点で物事を判断してきました。人がどのように感じるか?ということも自分なりに考えてはいたのですが、本当の意味では出来ていなかったのだと思います。瞑想をやり始めて2年近くになりますが、どうやら最近になってようやく身について来たような気がしています。
自分と同じくらい相手に対しても優しく接することが徐々にではありますが出来るようになって来ました。以前までは、自分が何かをしたとしても結果的に見返りを求めてしまっていました。(そんなつもりはなかったのですが・・・)
- 手伝うからこっちも手伝って
- 奢るからしっかりと働いて
- これを貸すからそれを貸して
自分ではそんなつもりはなかったのですが、結果的に心は見返りを欲していました。
でも、最近は相手が喜んでくれることがただただうれしく、何か見返りを求めることはなくなりました。無意識的にもです。喜んでくれるのがうれしいから手助けしようって感覚ですね。
自分が行うことで人が幸せになってくれるのがとてもうれしいんですよね。以前も少しはこのような気持ちは持っていたとは思うのですが、最近はこの喜びがとても大きな幸せになっています。
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3.マインドフルネスのやり方
この章ではマインドフルネスの詳しいやり方についてお伝えしていきます。
①マインドフルネス呼吸法
上記のリンクには私が行っているヴィパッサナー瞑想の呼吸法であるアーナーパーナーのやり方を詳しく書きました。この呼吸法は集中力を養うもっとも効果的な呼吸法になります。
目を閉じ呼吸に意識を向ければ瞑想になりますし、普段の生活で意識的に呼吸を感じることだけでもマインドフルネスな状態になれます。
是非、お試しください。
②慈悲の瞑想
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マインドフルネスワークの中でも慈悲の瞑想の効果が取り上げられています。慈悲の瞑想を企業内で行うことで思いやりの文化が育まれ、組織風土がよくなった企業がたくさんあるそうです。
また、慈悲の瞑想を行い続けることで共感力が身に付き、人の幸せを自分のことのように感じる脳の部位が強化されていくといった事例もありました。
私自身、慈悲の瞑想をやっていたのですが、つい最近までは瞑想後の2分くらいしかやっていませんでした。それを7分に変えてからとても大きな変化が起こっています。上の項目でも書きましたが人の幸せを自分事のように喜べるようになって来たのです。
慈悲の瞑想の詳しいやり方は上記のリンクにて紹介していますのでご参照ください。
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マインドフルネスとは何か?脳科学で証明されたこころの処方箋 まとめ
いかがでしたか?マインドフルネスの効果は。
科学で証明されるまでも瞑想は人の心を制御するために活用されて来ました。しかし、科学でその効果が検証されてからは欧米の企業に爆発的に普及されるようになって来ました。おそらく、この流れは今後も大きくなっていくことでしょう。
もしかしたら、世界規模でマインドフルネスが根付いていく未来が来るのかも知れません。そうなれば、きっと世界は私たちが想像もつかないほど良くなっていく可能性すらあります。
私自身、瞑想を行ってから考え方や価値観が大きく変わって来ました。そして、物質にとらわれることも少なくなり、自分自身のあり方を磨いていけるようになって来ました。マインドフルネスとの出会いは個人的にとても貴重な出来事となりました。
この章を機にマインドフルネスに興味を持たれた方はぜひ一度試されてみてください。きっと、大きな変化が待っているはずです。
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