人間関係を良好に保つ!傾聴力を高める10の心構え

傾聴 コミュニケーション能力
Q
今回の記事で学べることはなんですか?
A

傾聴とは何か?から始まり、傾聴の練習方法、傾聴をするうえで必要不可欠な10個のコツをお伝えしています。

傾聴とは人間関係を良好に発展させるうえでとても効果的なコミュニケーション方法です。辞書では「聞く」の意味を、音・声を耳に受ける。耳を傾ける。「聴く」の意味を、注意して耳に止める。耳を傾ける。と説明されています。傾聴とはもともとカウンセリングの造語です。

傾けて聴くというのは、意識して耳・身体・心を傾けて聴くということを表します。要するに全身で聴くということです。傾聴の技術を身に付けると、相手との心理的距離がぐっと縮まります。また、相手との信頼関係が強まり、人間関係も向上してくるのです。

傾聴を身に付けるということで、あなたのコミュニケーション能力は劇的に向上していくことでしょう。

この記事を書いた人

こんにちは、自己実現ラボの坪井一真です。私は国際コーチ連盟認定プロフェッショナルコーチ(PCC)資格を持つプロのコーチとしてビジネスパーソンやアスリートのコーチングに従事しています。

また、1日10時間の瞑想を10日間、誰とも話さずに行うヴィパッサナー瞑想を5回も経験し、個人的な瞑想時間は累計で4000時間以上

これらの経験から得た知識や洞察を基に、自己実現ラボではセルフアップデートをメインテーマに、読者がその日から変化できる内容をお届けしていきます。
□シードコミュニケーションズ株式会社代表
□国際コーチ連盟認定資格 Professional Certified Coach(PCC)
□米国CTI認定CPCC®(Certified Professional Co-Active Coach)

自己実現コーチ 坪井一真をフォローする

Ⅰ.傾聴とはどのような技術なの?

Photo by Magda Ehlers on Pexels.com

傾聴がどのような技術であるかを具体的にお伝えしていきます。

  • 話し相手の自己肯定感を高め信頼関係を構築する技術
  • 社会人基礎力に必要な技術

この2つを順を追って説明していきましょう。

1.話し相手の自己肯定感を高め信頼関係を構築する技術

人はだれしも「自分は大切な存在だ」「自分はかけがえのない存在だ」と認められたいという気持ちを持っています。

ありのままの自分自身を受け止めてもらいたいという欲求です。この気持ちを自己肯定感といいます。傾聴で話を聴くと、話している相手の自己肯定感はおのずと高まります。

あなたが相手の話を自分のことのように受け止め、共感し、真剣に理解するよう努めたとしましょう。

それが相手にとってはこの上なく心地よいのです。相手にとってあなたはとても話しやすく、信頼できる人だと映るのです。

行為の返報性

話し相手は自分を”ひとりの人間”として認められているということに対して何よりも心地よく感じます。

心理学には好意の返報性という法則があります。人はたとえ、それが些細なことであっても受けた好意に報いたいという気持ちを持ちます。

相手はあなたから受けた無償の好意に報いたいと感じるのです。そのため、あなたを自分にとって信頼できる貴重な存在として認めるということです。

自分にとってかけがえのない存在として認めることで好意に報いようとします。そこには当然信頼関係が生まれます。

2.人間関係を円滑にするために必要な技術

社会人基礎力

まずは上の画像をご覧ください。

「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」を社会人基礎力といいます。これは経済産業省が提唱している考え方となります。

上記画像のチームワークの項目に傾聴力があることをご確認ください。

傾聴力とはチームワークにはなくてはならない要素として取り入れられています。傾聴はこのように人間関係を円滑にするために必要な技術なのです。

傾聴力を身に付けると言うことは、1対1の話し相手とのコミュニケーションのみならず、人と人とがつながる場には必要な要素であるといえるでしょう。

経済産業省がチームワークにて傾聴を取り上げるには理由があります。

それは、ひとりひとりが傾聴を身に付けることは職場の人間関係をよりよくするのに最も効果が高いという点にあります。

職場の問題の大半は人間関係のこじれ

職場の問題の多くは人間関係に端を発します。では、なぜ人間関係に問題が生じるのでしょうか?

それはコミュニケーションによって自己肯定感が満たされていないからです。多くの人は話を聴くことよりも、話をすることに積極的です。結果として自分の話を聴いてくれる人が圧倒的に少ないということです。

自己肯定感は話を聴いてもらって初めて高まります。話を聴いてくれる人が少ないということは自己肯定感を満たせないということになります。

自己肯定感が低くなると自分を認めてもらえていないという気持ちになります。自己肯定感が満たせない職場ではストレスがたまって当然です。

多くの人にストレスが貯まることで人間関係に影響を及ぼすのです。だからこそ、ひとりひとりの自己肯定感を高めることが重要となるのです。

そして、ひとりひとりが快適に仕事が出来る環境が出来れば職場の人間関係の改善につながります。そのためには、自己肯定感を高める傾聴力が必要不可欠なのです。下記の記事は職場の人間関係を改善する傾聴力に焦点を当てておりますのでご興味のある方はあわせてお読みください。

Ⅱ.傾聴の種類

inverted e letter
Photo by Miguel Á. Padriñán on Pexels.com

傾聴には3つの種類があります。内的傾聴、集中的傾聴、全方位的傾聴です。それぞれ説明させていただきます。

1.内的傾聴

コーチングスキルの内的傾聴について動画で説明しています。

内的傾聴とは自分のうちなる声に意識をフォーカスしている状態をさします。

内的傾聴には2つの側面があります。1つ目の側面が人との対話の時出てしまう負の影響、2つ目の側面が自分との対話における正の影響です。

順を追って説明していきましょう。

人との対話の時に出てしまう負の側面

人と対話している時に内的傾聴の状態に入ってしまうと、話を「聴く」ことが出来なくなります。

その理由は相手の話を聴きながら、自分の心の声も聞こえてしまっているからです。要は、2つの話を同時に聞いてしまい、相手の話に集中できない状態となるのです。

だからこそ人と話をする時に内的傾聴に入らないように意識する必要があります。

自分との対話における正の側面

自己との対話での内的傾聴はとても重要な役割を果たします。内的傾聴とは潜在意識の声に意識をフォーカスすることでもあります。

自分自身の問題点や、今後の方向性などを潜在意識に問いかけると、潜在意識は効率的に対応方法を見つけてくるのです。

詳しくは下記の記事にあるフォーカスの力をご覧ください。

2.集中的傾聴

集中的傾聴について動画で詳しく説明しています。

集中的傾聴とは相手のすべてに意識を向けた聴き方です。

言葉や、表情、視線、しぐさ、身振り、声のトーンや張りなど相手から発せられるあらゆる情報を受け取ります。

これにより相手の立場になって物事を認識できます。

相手がどのようにとらえているのか?どのように感じているのか?といった言葉に表していない感情までをも聴き取るのです。

剣道の試合から得るもの

剣道の試合をイメージしてください。

そこには相手の踏込から、視線、動き方や、息遣い。ありとあらゆる神経を総動員して対戦相手と対峙するでしょう。

そして、相手が踏み込んで来たら身体は受けに守るか、よけるか、攻めるか、様々な選択肢から最善の策を見出していくことでしょう。この時に、相手が攻めてきてから頭で考えていたのでは、対応が間に合わないことは言うまでもありません。

剣道の試合のように集中的傾聴とは次に何をしようなどと頭で考えることはしません。相手の一挙手一投足から何を言いたいかを心で感じ取り瞬時に対応をしていくのです。

集中的傾聴は簡単なコツを心掛けるだけで行うことが出来るようになります。その簡単なコツとはこころの中で相手に「前へならえ」をするイメージを持つことです。

そうすることで相手の話に全身全霊を傾けることが出来ます。

3.全方位的傾聴

全方位的傾聴について動画で詳しく説明しています。

全方位的傾聴とは集中的傾聴よりも一段階レベルの高い傾聴方法だと言えます。

相手から発せられるメッセージは当然、周囲にあるフィールドのエネルギーや、相手のオーラなど受け手が直感的に感じたすべてを受け入れるという聴き方です。

話し手と受け手がふたりだけ宇宙の別世界にいって話をしているような感覚とでも言えばいいでしょうか。

周囲360度に対して全方位に向けて意識を集中している状態です。聞き手の集中力が高まるとこのような不思議な感覚に陥ります。

全方位的傾聴とは場に意識を向けること

しかし、特別な能力でもありません。全方位的傾聴は特に、人前で話をする人たちが自然と身に付ける傾聴方法だといいます。

セミナーの講師や漫才師など多くの人の前で話をする職種の人たちは場の空気を感じ取ることにたけているからです。

今日は「空気が重い」とか、「会場に熱が入っている」とか表現の方法は様々ですが、このように周囲から受け取るエネルギーが体感として感じられること特徴です。

この状態になると、直観力が大きく高まります。

その時、その場でもっとも効果的な質問が急に出てきたりするのです。また、心が通じ合っている間隔を共有できます。

うまく言葉に出せなくても意識が共有できるのです。

Ⅲ.傾聴の効果

傾聴がもっとも効果をはっきする場面について具体的にお伝えさせていただきます。

  • 家庭円満
  • 子育て
  • クレーム対応

この3つの対応を順をおって説明していきますね。

1.家庭円満

family of four walking at the street
Photo by Emma Bauso on Pexels.com

夫婦関係にこそ傾聴の技術はなくてはならない技術でしょう。特に男性は女性の話を聴くことに苦手意識を持っている人が多いのでなおさらです。

女性は話をすることでパートナーから、共感を得たい、大切にされていることを確認したいという気持ちを持っています。

しかし、男性は女性の話を他愛もないものと判断し聴く耳を持たない傾向にあります。

女性の本質は自己肯定感を満たしてもらいたいのです。にもかかわらず、多くの男性は先ほど取り上げた信頼を損なう聞き方をしてしまいます。

  • でも、しかしといったようにほとんどの話を否定する
  • 話し相手から話を横取りしてしまう
  • 相手の感情を読まない
  • まったく話に関心がなさそう
  • そんなのこういうことだよ。などという決めつけ
  • 結論をせかす

傾聴を身に付けることで夫婦間の問題の多くは解決される

傾聴を意識して夫婦の会話をしていけば夫婦間における意思疎通の問題の多くは取り除かれていきます。

もちろん、男女ともに傾聴力を身に付けたほうがいいということはいうまでもありません。

ここで面白いデータをご紹介しましょう。

シカゴ大学教授の山口一男氏は、仕事と家庭の調和の観点から、妻の夫婦関係満足度と夫への信頼度に焦点を当てて調査をしています。

その結果、会話が多いほど奥さんの結婚生活への満足度が高いそうです。

そして、旦那さんの月収が仮に10万円減ったとしても、下記のどれかが満たされれば満足度は減少しないことが分かりました。

  • 平日の夫婦の会話が1日に16分間増える
  • 夫の育児分担割合が現状より20%増加する
  • 夫婦一緒に大切に過ごしていると思える時間が休日に54分間増加する

いかがだったでしょうか?夫婦にとってどれほど会話が大事かということがお分かりいただけたのではないでしょうか?

平日の夫婦の会話が1日16分増えるだけで10万円の月収の減額に耐えられるのですから会話の力は強力です。

当然、この会話は傾聴して聴いてもらえることを前提としていますよね。

2.子育て

傾聴は子育てにもいかんなく効果を発揮します。特に子供の自己肯定感を高めるのに効果的です。

では、なぜ自己肯定感を高めることが子供の成長につながるのかをお伝えさせていただきます。

自己肯定感とは「自分は大切な存在だ」「自分はかけがえのない存在だ」という気持ちの事です。自己肯定感は幼少期にどれだけこの気持ちを親に満たしてもらったかによって大きく変わってきます。

自己肯定感が高い子供

自己肯定感が高い子供とは、ありのままの自分に自信を持てている状態のことをさします。

明るく、活発で、人間関係にも恵まれ、前向きでチャレンジ精神に富み、ストレスを抱えることも少なく幸せに生きていけます。

物事をプラスに考え前向きな人生を進むことでチャンスにも恵まれていきます。

自己肯定感が低い子供

一方、自己肯定感が低い子供とは、ありのままの自分に自信が持てません。自分には価値がないのではないかと常に心には不安を持っています。

失敗することを過度におそれるあまり、心に強いストレスを残します。にもかかわらず、人に認められたいという欲求が強いのです。

歪んだ自己表現から人の話を聞かずに自分の話ばかりを延々と続けることもあります。また、人を傷つけることで自分の優位性を保とうとしたりもします。

自己肯定感を高める傾聴

問題が多い子でも傾聴によって問題行動をなくすことが出来ます。

傾聴によって「自分は大切な存在だ」と受け入れられたという安心感につながり自己肯定感が高まっていくからです。

普段から傾聴を心掛けることで自然と子供の自己肯定感は高まり充実した人生を歩き出します。

3.クレーム対応

クレーム対応にも傾聴の技術は威力を発揮します。

群馬県総合教育センターが保護者からのクレームへの対応を調査した結果わかった事実があります。それは傾聴が解決策としてもっとも効果が高い技術だということです。一方、反論や、拒否では問題は長期化するばかりで解決はしないということでした。

マクドナルドのクレーム対応

近年(2017年ごろ)でいえばマクドナルドの対応が思い浮かばれます。マクドナルドの謝罪会見では、傾聴を使わずに、反論で応答したばかりに問題がこじれ長期化しています。

顧客がマクドナルドに何を期待していたのかを傾聴していれば対応は変わっていたことでしょう。

我々の方針は間違っていなかったということを公の場で公表することで、多くの顧客は大切に扱われていないと感じたのではないでしょうか。

マクドナルドが意識すべきは顧客が何に対して怒っているのか?ということについて耳を傾けるべきだったのです。

  • マクドナルドが正しかったという情報を求めているのか?
  • 商品券を求めているのか?
  • 社長の謝罪ではなく上層部の謝罪を求めていたのか?

すべて的を外れているように思えてしかたありません。

顧客の本質的な意見に耳を傾けるには上層部の人たちが真摯に顧客の声に傾聴をしていくべきだったと思います。

ただ、このことはマクドナルドに限ったことではありません。同じく、傾力がない企業はまだまだ多いのです。

模範的な全方位的傾聴のクレーム対応「タイレノール事件」

次に、企業のクレーム対応として模範的な傾聴方法となる「タイレノール事件」という事例をご紹介させていただきます。

「ジョンソン社の対応」

1982年、シカゴ警察はシアン化合物によって死亡した7人の市民が直前にタイレノールを服用していたことを発表しました。

タイレノールは国民薬と言ってよいほど普及していた薬で、この発表によって米国民は大きな不安に陥りました。

タイレノールの製造元はジョンソン&ジョンソンの子会社でしたが、ほとんどの米国民は 「タイレノールはジョンソン&ジョンソンが製造している薬だ」と思っていました。

「事件の概要」

この時点では、タイレノールにシアン化合物混入の疑いがあるというだけで、死亡原因かどうかは不明でした。 この情報を受けたジョンソン&ジョンソンでは、経営者会議が召集され、対応を協議しました。

会議は誰の反対もなく、すぐに結論に達しました。決議を受けて、当時のジェームズ・バーク会長は記者会見を行い、 消費者に対して「タイレノールは飲まないように」との警告を発するとともに、混入の疑いのある製品の全回収を発表しました。

バーク会長はその後も夥しい数のテレビニュースや記者会見に登場し、ジョンソン&ジョンソンが会社の利益ではなく、 消費者の命を守ることを第一に考えているという態度を示し続けました。

タイレノールの生産は中止され、販売をやめて小売店から製品が回収されました。 消費者向けのホットラインが開設され、あらゆる情報を提供する姿勢を示しました。 消費者から回収するために引換券が発行され、シアン化物を含まない新しい薬と交換できるようにしました。

このときの回収費用は1億ドル以上に上ったといいます。

6ヶ月後、ジョンソン&ジョンソンは、異物混入ができないようにカプセルや包装方法を変更し、 大規模な広告と売出しキャンペーンを行いました。

これほどの事件であったにもかかわらず、 タイレノールはそれまでの売り上げの90%近くを回復し、さらにバーク会長は「もっとも優れた経営者」として賞賛を浴びました。

ただし、死亡原因がタイレノールに混入したシアン化合物だったかどうかは明らかにされませんでした。

リスクコミュニケーションの部屋へようこそより引用  

顧客の視点で景色を見ることの大切さ

ジェームズ・バーク会長は顧客の声を全方位的傾聴をすることで、真摯に受け止めたといえるでしょう。

会社の立場からではなく、顧客ひとりひとりの立場となり社の対応を決めたのです。

  • タイレノールはジョンソン&ジョンソンではなく子会社の商品だと説明されることなのか?
  • 死亡原因はタイレノールと決まったわけではないと伝えることなのか?

顧客はこのようなことを望んでいないことはあきらかでしょう。自分の身に降りかかるかもしれない危険をどのように対処するのか?ということです。

会社として1億ドル以上の損失を考えるとほとんどの企業は、自社の過失ではないことを説明する事に終始してしまうでしょう。

しかし、それでは顧客からの信頼は0となりより多くの損害を被ることとなるはずです。マクドナルドが最たる例だと言えます。

バーク会長は自社の損害よりも第一に顧客の安全を考えて行動をとったことで、結果的に顧客の信頼は事件前よりもはるかに向上したのです。

これは、顧客一人一人が自分が大切にされているという自己肯定感を満たされたからだといっていいでしょう。

傾聴力とはこのようにクレーム対応において強力に威力を発揮するのです。

Ⅳ.人間関係を良好に保つ!傾聴力を高める10の心構え

person in black pants and black shoes sitting on brown wooden chair
Photo by cottonbro studio on Pexels.com

この章では傾聴力を高める心構えについて詳しくお伝えしていきます。

傾聴には当然、技術的なテクニックもあります。しかし、傾聴時にもっとも大切な部分はテクニック要素ではなく心構えにあります。

傾聴力を高める心構えをしっかりと意識が出来るようになれば傾聴の土台はしっかりと出来上がりるため、後々のテクニックが映えてくるのです。

1.相手に無理やり話をさせようとは思わないこと

傾聴を行おうと思う意識が強いあまり、「相手の話をいかに引き出していくか?」という思考にのみ焦点をあててしまうことは好ましくありません。

傾聴力を高める心構えとして、話し手のありのままを無条件に受け入れるということが大前提だからです。

この場合、 「相手からどのように話を引き出すか?」という思考は聴き手の立場からの状況判断に過ぎません。

このような思考回路に陥った時は、沈黙を過度に恐れるあまり、矢継ぎ早に質問をしていくケースが考えられます。

沈黙を恐れない

沈黙が訪れた時は怖がるのではなく、相手がどんな気持ちになっているのかを想像していくことが大切です。

考えがまとまるのに時間が要しているのかもしれません。感情の整理がついていないのかもしれません。過去の記憶のとらえ方を見つめなおしているのかもしれません。

もしも、あなたが話し手の沈黙を恐れるあまり矢継ぎ早に質問を繰り返してしまっては、相手の感情をとらえることは難しくなることでしょう。

自分視点ではなく、相手視点で話を聴く姿勢、そして話し手のありのままを受け入れる姿勢を絶えず頭においておくことが必要です。

2.相手の話に興味を持つこと

想像してみて下さい。

あなたの話に聞き手が無表情であいづちだけしか打たないところを。あなたは話をしていて満足出来るでしょうか?おそらく出来ないでしょう。

理由は簡単です。聞き手が話に興味を持っていないように映るからです。

聞き手にこのように見られては話し手は話をすること自体が苦痛になってくるものです。沈黙は嫌だから場だけつないでおこうと半ば義務感で話続けることとなるでしょう。

相手の話に興味を持つという好奇心があるだけで、話の聴き方は格段に変わってきます。特に、振りや、手振り、表情や声の高低などのノンバーバルコミュニケーションに直に現れます。

聞く側が心を閉ざしていては傾聴力を高めることは出来ません。

相手の話を興味深く聴くという姿勢こそ傾聴力を高める上で必要不可欠です。自分が話す話に身を乗り出して聞き手が聴いてきたらあなたはどのように思われますか?きっと話をすることに苦痛は感じないことでしょう。

それよりももっとたくさんの話を自然としていきたいという気持ちに駆られるはずです。聞き手の興味は話しての話に火をつける薪のような役割を果たしていくのです。

3.共感を持って聴く

心理学者のアルバート・メラビアン博士は、話し手が聞き手に与える影響がどのような要素で形成されるか測定しました。 その結果、話し手の印象を決めるのは、「言葉以外の非言語的な要素で93%の印象が決まってしまう」ということがわかりました。

  • 視覚情報 (Visual) – 見た目・身だしなみ・しぐさ・表情・視線 …55%
  • 聴覚情報 (Vocal) – 声の質(高低)・速さ・大きさ・テンポ …38%
  • 言語情報 (Verbal) – 話す言葉そのものの意味 …7%

実は、言語的な部分は1割にも満たない、7%しか相手に伝わらないのです。

相手に伝わる印象の93%がノンバーバルコミュニケーションです。私たちはともすれば「何を聴くか?何を話すか?」に焦点を置いてしまいがちですが、他者との会話において話す言葉そのものから発せられる印象は7%しかありません。

傾聴力にとって興味を持つことと同じくらい、共感を持って聴くことが大切な理由はこのデータが物語っているといえるでしょう。

あなたの話を共感して聴いてもらったとしたらあなたはどのような感情を抱くでしょうか?

あなたが共感をもって話を聴くと話し手にもあなたがたった今抱いた感情が芽生えることとなるでしょう。

4.想像力使って話を聴く

共感をもって聴くとは相手が経験したことを自分も経験したことのように感じることです。

例えば話し手のペットが死んだという話の場合、仮に自分がペットを飼ったことがなくても、ペットが死んだらとても悲しいんだろうという気持ちを想像力を使ってイメージすることが必要となってくるのです。

心理学者カール・ロジャーズは、共感的理解のことを「クライエントの私的な世界を、あたかも自分自身のものであるかのように感じ取り、しかもこの”あたかも~のように”という感覚を失わないこと」と表現しています。

ここがポイントなのですが、ペットが死んで悲しいだろうなという気持ちを理解しつつも、話し手のペットの死に引きずられ打ちひしがれてしまっては意味がありません。

聞き手が泣き崩れてしまったのでは、話し相手の悲しみは長引くだけです。あたかも自分が体感したように想像し、気持ちを共感しつつも、あくまでも第三者であるという自覚を持っている必要があるのです。

この自覚を持つことによって、相手の気持ちに引きずられてしまうことはなくなり、傾聴の姿勢を保ち続けることが出来るのです。

「大変だろうな。苦しいんだろうな。気持ちはすごくわかるよ」ということが、ノンバーバルコミュニケーションにて伝われば相手は共感を感じます。

そのためには、自らは第3者としての認識を保ちながらも想像力を駆使して共感していく必要があるのです。

5.感情の深さを理解する

感情の深さは時間や場所によって変わってくるものです。傾聴ではこのような細かな感情の機微についても受け止めていけるよう努めていく必要があります。なぜなら、細かな感情の機微すらも理解してもらっているという感覚は話し手にもっとも敏感に伝わる側面だからです。

例えば、話し手が海外旅行から戻ってきた次の日に、あなたに話をする場面をイメージしてみて下さい。いかに海外旅行が楽しく、有意義で、満喫できたかについてをあらゆる感性を使いダイナミックに表現してくることでしょう。

しかし、1か月後であればどうでしょう?同じ話でも気持ちは落ち着き、浸るような感情で話をするかもしれません。

同じ話をするにしても、話の根底にはあいての感情があります。そして、感情によって表現方法は変わってくるものです。あなたは、相手の感情の深さを理解し、その時、その場にあった動作や表現方法であいての感情を理解し傾聴していく必要があるのです。

また、悲しみに対しても同じことが言えます。ペットが死んだ翌日に話を聴くなら、想像力を駆使して、悲しみを共有し、寄り添うように話を聴くことが必要かもしれません。

また、一か月後であれば一緒に思い出話を聴いてあげることが必要かもしれません。相手の感情の深さをしっかりと理解して傾聴することが相手にとってはとても癒されるのです。

6.話し手に寄り添う

私たちの心の中には同時に矛盾した感情を持つことは珍しくありません。時には社会的道徳心にかけていると自分自身で判断してしまいかねない思いも内在することがあるものです。

例えば、介護していた親がなくなってしまった時に、悲しいという気持ちと、苦しい介護から免れたという安堵感が内在してしまうこともあるかもしれません。

しかし、親がなくなってホッとしているなどということは、社会的道徳心にかけていると判断し、自分自身の心の奥底に深く押し込んでしまうことがあります。ホッとしている感情を内心ではわかっていながらも頭では理解することは出来ないのです。

このような時、聴き手は葛藤に気がついても話し手が蓋をしておきたい感情を無理に聴きだすことはすべきではありません。

その人の立場に立って話を聴くと言うことは、話し手にとってのぞかれたくない内面をあえて聞こうとすることではありません。

葛藤に気が付いたとしても、あえてそこには触れずに、悲しみに共感し寄り添うような優しさも必要となってきます。

7.自分の意見はおいておく

傾聴力を高めるとは相手の話を全面的に支持することだと捉えられてしまうことがあります。しかし、それは正しくはありません。

話し手にはあなたの価値観と対立している人も出てくることでしょう。傾聴するからと言ってあなたの価値観をあいてに合わせる必要はありません。あなたの価値観と違うということを認識しながらも、相手の立場となって、相手の意見に共感をしていくのです。

たとえば、相手が支持政党の話をしていると仮定しましょう。あなたの支持政党と違う人や、対立する支持政党であったとしても、その話し手の立場になって考えることは出来ます。

傾聴時の心構えとしてあなたの意見は置いておきながらも、話し手の感じ方を尊重し、その気持ちを理解するよう努めることが大切なのです。

なぜその政党を支持するのかを話し手が話したいようであれば、その思いにある感情に焦点をあてて傾聴力を駆使していくのです。

ここで大切なことは自分の意見を表明することではありません。たとえ、あなたにとって真逆の価値観であったとしても共感をしめすことが重要です。

初めのうちはとても難しいことかもしれません。しかし、自分の意見は一時的においておくという認識を持ち、経験を積むことで自然と身についてくることでしょう。

相手の価値観に合わせることではなく、相手の価値観に共感していく姿勢を常に意識しておいて下さい。

8.色眼鏡で判断しない

私たちは人を色眼鏡で判断しています。

「暗そうな人」「近寄りがたい雰囲気の人」「陽気で社交的な人」「面白い人」「優柔不断な人」「八方美人な人」etc・・・

私たちはあらかじめどのようなタイプの人かと過去の経験から判断しています。これは、今後どのようにその人に接していくかを決める重要な要素となってくるものです。

「第一印象は2分で決まって、その後はもう変わらない。」

(『出会いをドラマに変える 2分の法則 第一印象の心理術』植木理恵著)

私たちには過去の経験から人を色眼鏡で判断してしまう習性がありますが、傾聴では色眼鏡を外していかなくてはなりません。

社会学者ハワード・バイカーによるとこの色眼鏡は世間の人が持っている社会的な固定イメージだそうです。このイメージを張ってしまうと人はおのずと張られたイメージ通りに行動する傾向が多いのだといいます。

そうなると、話し手の本当に伝えたい内容ですら色眼鏡というフィルターを通してでしか理解できなくなります。それでは傾聴になりません。

話をする前に色眼鏡で見ていないかを振り返り、相手を理解しようとする姿勢を持ち続けることで色眼鏡を外していくことが出来ます。

9.インタビューしない

  • 「お住まいはどちらですか?」
  • 「お子さんはいらっしゃるんですか?」
  • 「休日は何をしてすごされているのですか?」
  • 「どのようなお仕事をされているのですか?」

などと、矢継ぎ早に相手から話を引き出したいあまり、延々とインタビューを繰り返すのでは、相手は嫌気がさしてしまうことでしょう。

傾聴力を高めるには、自分が聞きたいことを聞くのではなく、相手が話したい内容を聞き、相手の気持ちを理解することです。

また、親子関係や教師と生徒、上司と部下の場合は、傾聴をしようとしているつもりがいつの間にか尋問になってしまうケースも見受けられます。

小学生がいたずらをした場合を考えてみましょう。

  • 「なぜそんなことをしたの?」
  • 「理由は何なの?」
  • 「どうして答えてくれないの?」

このように客観的な事実をつかむための質問もまた傾聴とは呼べません。

傾聴では相手の主観を理解することが大切なのです。

なぜいたずらにいたったのだろうか?この子の立場になって気持ちを知りたい。という姿勢で臨むべきです。

事実を判断することや、叱る材料を見つけるための聞き方ではなく、その子の気持ちを真剣に理解するために聴くという姿勢が何よりも必要となってきます。

10.自分の話はしない

傾聴をしているとふと傾聴状態から戻ってしまうこともあります。自分が聞きたくない話だったり、自分のトラウマとリンクするような話だったり、自分が知っている内容や、解決した問題だったりと理由は様々です。

特に自分が知っている内容や解決した問題と接点がある話だと話したくなってくることもあるでしょう。

でも、振り返ってみて下さい。聞き手が何を求めているのかを。あなたの意見やアドバイスを聞きたくて話をしているのでしょうか?問題解決法を知りたくて話をしているのでしょうか?

もしそうであればあなたの話は役に立つでしょう。しかし、話し手が求めているものが

「聴いてもらいたい」「理解してもらいたい」「気持ちを分かってもらいたい」

という気持ちであればどうでしょう?

あなたの話や問題解決方法は話し手の腰を折ってしまうことになりかねません。男女間でのもめごとの最も多い理由がまさにこの件でしょう。

女性はパートナーに「聴いてもらいたい」「理解してもらいたい」「気持ちを分かってもらいたい」という気持ちがあるのに、パートナーは共感どころか、自分の意見や価値観を押し付けてしまう傾向があります。

これでは、女性のフラストレーションは増すばかりでしょう。

大切なことは、相手が話をする上で何を求めているのか?を知ることにあります。

その根底にある気持ちを理解しないとあとあと手痛いしっぺ返しがくるものです。悩みの多くは聴いてもらうことで解決してしまうというものなのです。

これと同じく、傾聴でも相手が何を求めているか?という理解がないといつの間にか自分の話ばかりをしているといったことにもつながりません。それで相手にフラストレーションがたまっていては元も子もありません。

何度もお伝えしていることですが、相手の気持ちを理解することが傾聴では最も大切な資質なのです。

まとめ

今回の記事では傾聴力を高める上で最も大切な心構えについてお伝えしていきました。

一度にすべてを行おうとするのではなく、1つ1つをしっかりと身に付けていただければ必ずあなたのコミュニケーション能力の向上につながると信じております。

「相手の立場に立って聴く」という信念を念頭に置いていただければ必ず近いうちに使いこなせることでしょう。

下の記事では自己実現ラボで書かれたコミュニケーション能力を向上させるための記事をまとめさせて頂きました。コミュニケーション能力を向上させたい方はご自身にあった記事を見つけることが出来るようになっております。あわせてご覧ください。

関連記事

よりコミュニケーション能力を伸ばしたい方は下記のカテゴリから必要な記事をご参照下さい。

参考文献

コーチング・バイブル ヘンリー・キムジーハウス キャレン・キムジーハウス フィル・サンダール 東洋経済

はじめての傾聴術 小宮昇 ナツメ社

コメント

タイトルとURLをコピーしました