今回の記事では怒りをコントロールする方法についてお伝えさせていただきます。怒りとは自分をも他人をも傷つけてしまうほどとても強力なパワーを持っています。にもかかわらず、怒りのパワーを過小評価している人が多いような気がします。
その原因は、怒りの感情が出ても多くの人が無理やり抑え込めばやり過ごせると考えているからです。しかし、怒りのパワーは抑え込めばいずれ消えるという類のものではありません。無理やり怒りの感情を抑え込むと、自分でも気が付かないうちに取り返しのつかないほど大きなストレスと変わってしまうのです。
怒りの感情をコントロールする方法が分かれば、怒りの感情を無理やり抑え込む必要はないので、大きなストレスに変わってしまうこともありません。
怒りに関する思考法を変えるだけで、ストレスフリーな未来が待っているのです。今回の記事では怒りのコントロール方法思をお話させていただきます。
Ⅰ.抑え込んだ怒りを具現化する
この章では怒りをイメージとして具現化して、怒りの根源と対話する方法についてお伝えしていきます。イメージだからといって、馬鹿には出来ないほど力強く作動する怒りのコントロール方法です。それでは、具体的に具現化の方法をお伝えしていきます。
1.怒りの存在を認める
この項目をみて、怒りの存在を認めるとはどういうことだろう?とあなたは疑問に思われたのではないでしょうか?それは、怒りと言う感情は、認める認めないに関わらず自分で分かるものだという認識があるからでしょう。自分のことは自分が一番良く分かるという思いがあるなら当然の疑問ですよね。
しかし、自分のことは自分が一番良く分かるというのは単なる思い込みに過ぎないのです。どちらかというと、自分のことは自分が一番良く分からないと言ったほうが正解かもしれません。怒りの感情も同様です。自分自身ではすぐにわかる感情だと思っていても、実のところ自分では何もわかっていないのかも知れません。
というのも、私たちの行動の大半を決定づけているのが無意識だからです。私たちは表層意識で自分自身を寸分の狂いもなくコントロールしていると思いがちですが、実はそうではありません。無意識による決定が多いという事は、私たち自身が意識上で気が付かない行動が思いのほか多いということです。
1-1.無意識が怒りの感情を抑え込んでしまう
とくに、無意識は意識上で気が付く前に感情を押し殺してしまうことが得意なのです。怒りも例外ではありません。瞬間的にイラッときてもすぐにその気持ちがどこかへ消えてしまうといった経験は誰にでもあると思います。それは無意識が怒りを抑圧したからです。
このことを聞いて、あなたは無意識が怒りを抑えてくれるなら、わざわざ怒りの存在を認める必要なんてないじゃないか?と考えられたかもしれません。しかし、怒りを抑え込むというのは怒りを忘れるのとは違います。あくまで心の底に無理やり抑え込むだけなのです。
1-2.怒りとは強力なエネルギー
本来、怒りとは人間の感情の中でも強力なエネルギーを持っています。この強力なエネルギーを無理やり抑え込むのですから、精神的負担は相当なものとなってくるのです。怒りがたまり続ければ強力なストレスとして自らをも傷つけてしまうのです。
このようにならないためにも、自分が怒りを押し殺してしまっているかもしれないということを認め、怒りの所在地を明らかにしていく必要があります。次の項目では自分が現在怒りをためていないかを確認する方法をお伝えしていきます。
2.うちなる声を聞く
無意識が心に押し殺してしまった感情でも、意識的に質問を投げかけることで気が付くことが出来るものです。このように自分の深層心理と対話する方法をセルフコーチングといいます。セルフコーチングをすることで、押し殺していた怒りの声を聞くことが出来るのです。
とはいえ、どのような質問を投げかけるとよいのかが分からなければ、セルフコーチングは出来ません。そのため、以降は押し殺した怒りを見つけるためのセルフコーチングで使う質問例を挙げさせていただきます。
2-1.押し殺した怒りを見つけるための質問例
- 私は人間関係で不満を抱えていないか?
- 私が押し殺している怒りは何か?
- 私は仕事で怒りをかかえていないか?
- 私は家庭で怒りをかけていないか?
- 私は過去に怒りを抱えていないか?
- 私は現状に怒りを抱えていないか?
- 私は未来に対して不満や怒りを感じていないか?
- 私は自分自身の価値観に基づいて生きていけているか?
このほかにも思い当たりそうなことがあったら深層心理に質問を投げかけてみて下さい。そして直感でかまいませんので、この中の怒りからもっとも対処していきたい怒りをひとつ絞ってみて下さい。
2-2.深層心理から怒りが抽出されてきたら
例えば、過去のある出来事に怒りを感じてきた場合を想定してみましょう。この場合、次の質問として、「いつごろ?」「どこで?」「なにを?」「だれと?」「どのように?」など、「なぜ?」以外の5W1Hや、「具体的に?」「他には?」「それから?」など事柄を掘り下げる質問が有効です。
このように質問をすることで、過去の怒りが明確になってきます。両親に対しての怒りかもしれませんし、友人に対しての怒りかもしれません。または兄弟や自分自身に対しての怒りかもしれません。質問を繰り返し、深く内省することで怒りの理由は見つかります。
3.第一感情に目を向ける
アドラー心理学では、自分自信が感じる感情を第一感情、自分が相手や物事に投げつける感情を第二感情と表現しています。怒りと言うのは対象に矛先を向ける感情だから第二感情だと言えます。そして、第二感情の前には必ず第一感情があるのだとアドラー心理学では考えています。
この項目では、怒りの第一感情に目を向けるための方法についてお伝えしていきます。例えば、過去に親に厳しくしつけられたことが両親へ対する怒りとして残っている場合を考えて見ましょう。この場合、怒りの対象が両親に向かっているため、第一感情を探る質問をして見ます。
3-1.第一感情を探る質問
「私が感じている両親に対する怒りの第一感情はなんなのだろう?」
このように質問を投げかけることで、深層心理という泉に小石が投げ込まれたように、意識の波紋が広がります。この表出される波紋がイメージや感覚となり自分自身に答えを知らせてくれるのです。
ここでは、自分にはやりたい夢や目標があったのに、両親が聞く耳を持ってくれずに、自分たちの都合で勉強することを強要されていた。とイメージが出たとしましょう。この中で、自分の意見がないがしろにされて傷ついたという感情に目を向けてみるとどうでしょう?
両親に何も自分の意見を聞いてもらえなかったので、疎外感や孤独感が感じられるかもしれません。また、自分のことを受け入れてくれなかったことによる悲しさかもしれません。
このように、怒りの感情を掘り下げていくと、怒りの原点となる第一感情が必ず見つかります。
4.擬人化する
この項目では擬人化についてお伝えさせていただきます。先ほど見つけた第一感情がかなしみだったと仮定して、擬人化の例を出して見ましょう。かなしみの感覚がどこから感じられるか意識を感覚に向けていきます。頭の中からなのか?それとも、胸の奥あたりにあるのか?それとも、おなかの中に居座っているのか?もしくは、身体にへばりついているかも知れません。
自分がどのように感じるかが重要なので、どこで感じられても不正解はありません。感覚がはっきりしない場合は、画像や、音としてのイメージに意識を向けていくのもいいでしょう。しっかりと、かなしみの感情を受け止められたら、かなしみの感情を擬人化していきます。
次からは、かなしみの感情があると仮定して名前を付けていきます。ほかの感情がある場合には、その感情に名前を付けてみて下さい。
4-1.名前を付ける
かなしみを強く感じる部分ならそこに意識を向けて、画像や音なら頭の中でイメージをしてみて下さい。そして、このかなしみに名前を付けていきます。かなしみなので「なみだちゃん」とでもつけてみましょうか。
私の場合だったらおなかのあたりに感情を感じるので、なみだちゃんをおなかのあたりにイメージします。涙の形をしたかわいらしいゆるきゃらのような感じですね。ちょうどおなかのあたりになみだちゃんがちょこんとひっついているような状態です。
このように擬人化することで、怒りの原点となる感情と対話が出来る準備が整いました。擬人化にはたかがイメージと馬鹿に出来ないほど強力な力があります。実際のコーチングでも擬人化はとても強力な武器となります。同じくセルフコーチングでも擬人化はとても強力に機能します。
5.蓋を外す
怒りを心の蓋に閉じ込めてしまうとストレスとなって自分だけでなく、周囲の人たちまで傷つけてしまう結果となってしまいます。これを心理学用語でアクティングアウトと言います。蓋に閉じ込めてしまうとストレスが大きくなるばかりでいいことは一つもありません。
蓋を外し怒りの感情を受け入れることで、初めて怒りの感情は解き放たれるといってもいいでしょう。擬人化した怒りの原点と話をすることが最も簡単に心の蓋を外す作業だと言えます。そして、対話を深めれば自然と燻っていた怒りの感情は消えていくことでしょう。
5-1.擬人化した感情と対話する
擬人化した感情と対話するとはどういう事でしょうか?それは、擬人化した感情の声を聞いてあげることです。擬人化した相手の視点に立って、相手の気持ちにそった質問を投げかけてみることが大切です。
ここで大切なことは、ユアクエスチョンです。ユアクエスチョンとは「あなたは」からはじまる疑問文のことです。この質問は相手の感情に焦点をあてた聞き方です。擬人化した感情の気持ちに合わせたユアクエスチョンを投げかけることで、擬人化した感情の気持ちは徐々に落ち着いてきます。
当然、自分が感じている感情も小さくなっていきます。そして、ある程度、気持ちが落ち着いたら、擬人化した感情のイメージは徐々に小さくなっているはずです。そのイメージにさよならを告げるか、旅立たせるか、ともにいるかを自らで決めてみて下さい。
いずれにしろ、感情は相当小さくなっているので、好きなようにしてみて下さい。ご自身が一番しっくりするものを選ばれるのが最もいい結果につながると思います。
6.よりよい将来にするためには?
怒りの感情が消えた状態で、次にすることは、何の制約もなかったら自分はどのような将来を送っていきたいのだろうか?と自分に投げかけてみることです。
自分の中に凝り固まったストレスから解放された状態で、自分の理想像を思い浮かべることで、今後のよりよい可能性や方向性が見えてくることでしょう。
いままで、ストレスがたまっていたことで、自分を過小評価していたかも知れません。また、自分の過去を振り返り、こんな自分だからと自分の可能性を狭めていたかもしれません。
いずれにしろ、自分を縛り付けていたものから解放された状態で理想の将来像を考えることは自分の可能性や能力を大きく広げていきます。
何物にも束縛されていないあなたは誰よりも魅力的で、想像力にあふれ、可能性に満ちていると感じることが出来るでしょう。この自信こそが、成功へつながる最も力強い味方となります。
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Ⅱ.怒りの原因となるビリーフを打破する
ビリーフとは「~ねばならない」という思い込みを指します。ビリーフを持っていると自分が考えた通りにならないだけで怒りが発生してしまいます。そして、無意識的に怒りを抑え込むことでストレスとして大きくなってしまうのです。
この項目では、ビリーフの性質をしり、ビリーフにおける怒りの対処法について詳しくお伝えしていきます。
1.怒りのビリーフの種類
まずは、怒りのビリーフにはどのような種類があるかを紹介いたします。下記に紹介するビリーフは思いやりの人間関係スキルより引用させていただきました。
1-1.自分自身に課す怒りのビリーフ
- 決して間違いを犯してはならない
- 常に正しくあらねばならない
- 常に合理的で一貫した態度でなければならない
- やられたらやり返さなくてはならない
- 決して自分を馬鹿にしてはいけない
1-2.相手に課す怒りのビリーフ
- 相手は、私を怒らせてはならない
- 相手は、私の意見に同意しなければならない
- 相手は、私のことを批判してはいけない
- 相手は、常に私が間違わないように導かねばならない
- 相手は、常に私のやり方を認めなければならない
- 相手は、常に私の気持ちを汲み取らねばならない
- 相手は、いかなる理由があろうとも、私の自由を侵害してはならない
- 相手は、常に、女らしく(男らしく)あらねばならない
- 相手は、100%私の要求を満たさなければならない
- 文化の差があろうとも相手は、私(達)の文化に適応すべきである
1-3.人間関係に関する怒りのビリーフ
- 私達の関係には、決して争いごとがあってはならない
- 私達の関係は、外部の人から争いごとがないように見えなければならない
- 私達は、お互いに、協働するよりも競争し合わねばならない
2.再構成法
再構成法とはビリーフを肯定的な意味に書き換えることを指します。NLP用語でリフレーミングといいます。
まずは、Ⅰ.2うちなる声を聞くでやったようにセルフコーチングを行います。そして、最も怒りを感じた光景を思い返してください。
そして、その怒りを感じた時にどのようなビリーフが自分の中にあったかを紙に書き出してみて下さい。上記の怒りのビリーフの種類を参考にしていただくとわかりやすいと思います。
次に再構成法の例を出して解説いたします。
2-1.再構成法の例
怒りを感じた瞬間に自分がどのようなビリーフを感じたかを紙に書いたら、次に、このビリーフの意味合いを変えた言葉を紙に書き出します。
例えば、怒りを感じたビリーフが「決して間違いを犯してはならない」だった場合を仮定してみましょう。このビリーフを自分にとって肯定的に書き換えて見るということです。
「間違いを犯すのはいいことだ。なぜなら間違いを正すことで人は成長につながるのだから」
「間違いを犯しても次につながるよう改善をしていけば、その間違いは成功につながる」
「失敗は成功のもと」
実際はいくつも書く必要はありませんが、自分にとって心がわくわくするような言葉を作り上げられれば成功と言えるでしょう。心がわくわくするということは、自分自身の価値観とあっているということですから。
2-2.再構成法に基づいてその後をイメージしてみる
先ほど思い浮かべた怒りを感じた瞬間をもう一度思い返します。そして、再構成法で作り上げた言葉で考えた時の自分の感じ方や、行動の仕方がどのように変わると思うかについて書き上げます。
ビリーフを変える作業は一朝一夕ではいかないので、出来れば1週間ほど毎日、その後をイメージして書き出すよう心掛けてください。そうすることで、自然と自分のビリーフが書き換えられていきます。
Ⅲ.怒りの別の理由を考えてコントロールする
再構成法では、肯定的な理由を考えることで、ビリーフを書き換えていきました。ビリーフを書き換えることで長い目で見た時に怒りが湧き出る理由を対処することが出来るのです。
この項目では別の方法についてお伝えしていきます。
その方法とは、怒りの状況に関して論理的に振り返り、冷静な視点で別の判断が出来るかを考えるということです。これを行うことで、瞬時に感情的になってしまうような怒りも冷静に振り返ることが出来るようになります。
1.瞬間的な怒りに対応する例
瞬間的な怒りとは特に近しい人間関係の間ほど起きてしまうものです。ここでは、親が子供をしかりつける時の例を上げてみましょう。
「なんでいつもいったことが出来ないの(怒)」
威圧的に接してしまうことを続けると、いつしか子供は親に対して憎しみの感情を芽生えさせていくことでしょう。反論を一切ゆるさない上下関係のコミュニケーションでは対立を生むだけで、なんの解決にもなりません。
このように感じた時も、子供がどうしていったことをやってくれないのか?別の視点から考えてみます。
- 忙しくてあまり相手に出来なかったからかまってほしいのではないのか?
- 何か悩み事でもあるんじゃないのか?
- 私に伝えたいことがあるんじゃないのか?
一方的な判断を下して然りつけてしまっては、相手の反論すら許さない言葉と権力の暴力に過ぎません。子供にとって絶大なる権力を持っている親が威圧的に接してきたら、自分の心を閉ざして親のいいなりになるしか道はありません。このような事を続けていてはいずれ親子関係に亀裂が入るのは避けようがありません。
怒りを投げつけて打ち負かすのではなく、怒りをいくつもの視点から分析することで、客観的に振り返ることが出来ます。そして、いくつもの可能性を視野に入れたうえで自分の気持ちを伝えていくことが双方にとってベストな選択だと言えるでしょう。
2.アイメッセージ
私を主語としたメッセージをアイメッセージ、あなたを主語としたメッセージをユーメッセージと言います。アイメッセージが自分の気持ちを相手に伝えることで、気持ちを共感しやすいのに対し、ユーメッセージは相手を攻め立てるニュアンスに聞こえるため対立を生みやすいのです。
多くの人は相手を非難する時にユーメッセージを使います。これでは対立を生むだけで建設的な解決策は生まれません。瞬間的な怒りが出た時でも、客観的に物事を振り返り、アイメッセージで伝えることを意識すれば自分にとっても相手にとってもよりよい結果が生じてくるでしょう。
先ほどの例をアイメッセージで考えて見ましょう。客観的に物事を振り返ることで、「いうことを聞かないのは自分に何か伝えたいことがあるかも知れない」と分析したとします。
その場合、アイメッセージで、「(私は)最近いうことを聞いてくれなくてとても悲しいの。なにか私に伝えたいことがあるの?」とでも聞いて見たとしたらどうでしょう?
おそらく、「(あなたは)なんでいつもいったことが出来ないの(怒)」というよりも、はるかに相手の心に自分の気持ちが伝わることはお分かりいただけるのではないでしょうか?そして、気持ちが伝わるからこそ、相手は否定的な反応ではなく、肯定的な反応で答えようとしてくるでしょう。
怒りを客観的に分析し、アイメッセージで伝えるよう心掛ければ、人との対立はおのずと減少していきます。その結果、精神的にも穏やかな日々が続いていくでしょう。
Ⅳ.怒りの対処の自己会話
この項目では怒りの原因に対処する方法をお伝えしていきます。怒りの原因と向き合った時、怒りを爆発させることは簡単です。しかし、爆発させるのではなく、コントロールさせるために対処の自己会話を行うことで冷静になれます。あくまでもコントロールをするのであり、怒りを抑え込むものではありません。
怒りを感じた時に怒りを鎮める言葉を思い浮かべることで、怒りの炎を鎮静化していきます。怒りに蓋をして気づかなくするのではなく、怒りの炎を消火することでエネルギーを抑えていくという方法です。
怒りの対処の自己会話には怒りを引き起こす状況に出くわした時、怒りを引き起こしている状況の最中、怒りを引き起こした状況が済んだ事後に使えます。以降は思いやりの人間関係スキルより怒りの対処の自己会話を引用させていただきます。
1.事前
「落ち着け。この状況で何をしたいと思っていたのか思い出せ」
「何が問題か思い出せ。問題に集中しろ。あきらめるな」
「つまらないプライドを捨てれば、この状況を何とかできる」
2.最中
「冷静になれ。彼(彼女)の思い通りにはさせないぞ」
「リラックスしろ。この怒りは、私に落ち着いて本来の目標を忘れるなという合図だ」
「彼(彼女)は、競争したがっているだけだ。でも、私がそれに巻き込まれる理由はどこにもない」
3.事後
「攻撃的にならずに対処できる方法を学んだぞ」
「たとえ、問題が未解決のままでも、カーッとならずにすんでよかった」
「対処の自己会話を使えば、自分にうんざりしたり、無力感に陥らずに済む」
4.深呼吸
怒りの対処の自己会話を使いながら、ゆっくり深呼吸をすることで、怒りの感情を和らげていくことができます。
5.冷静になるという事
無意識で怒りを抑え込んでしまうとその怒りがストレスとなってしまうことは先ほどお伝えいたしました。かといって、怒りを感じたら絶えず爆発させてしまっては人間社会で生活をしていくことすらままなりません。怒りを感じながらも、冷静に対処することが私たち大人に求められることではないでしょうか。
ただし、我慢をするのも怒りを抑圧することにつながるのでお勧めできません。だからこそ、怒りにつながる状況では、自己会話を意識的に使うことが大切です。そして、冷静になるよう努めることで次第と怒りの炎は鎮火していきます。
5-1.我慢との違い
慣れないうちは我慢するのとどこが違うのか?と思われるかもしれません。しかし、怒りを対処する自己会話は我慢とは大きく違います。自己会話を行うことで、自分の感情を一歩離れたところから冷静に見つめなおすことが出来るからです。
我慢では怒りの感情に捉われてしまいます。これでは怒りしか見えてこなくなるからつらいのです。怒りの自己会話では、逆に自分や相手、周囲の状況を客観的にとらえることが出来るため冷静に判断することが出来るのです。
とはいえ、なれないうちは、怒りの自己会話も我慢もそう変わらないでしょう。怒りの自己会話を意識的に使い、訓練していけば自然と怒りの感情を冷静にコントロールすることが出来るようになります。それまでは、時間がかかるかもしれません。しかし、身に付けてしまえば怒りの感情を自在にコントロール出来るためおすすめの方法といえます。
事前・最中・事後で使う会話はご自身で意識的に決めてみるほうが、いざという時に使いやすいかと思われます。
Ⅴ.視覚イメージを使う
この項目では視覚イメージを使い怒りに対処する方法をお伝えしていきます。イメージトレーニングとでもいったほうが分かりやすいかもしれません。イメージを使うことで実際に怒りを感じる瞬間を臨場感を持って体感できます。そして、イメージの中で怒りの対処法を身に付けることで現実でも同様の対応を出来るようになっていくことを目的としています。
1.リラックス
イメージトレーニングを行う前は出来るだけリラックスするよう心掛けていきます。リラックスできる体制を整え、深呼吸をし、心休まる風景を思い描いていくことをお勧めします。心がリラックスできるほどイメージの世界をより臨場感を持って体感することが出来ます。
リラックスの方法について詳しく知りたいという方は、自己催眠をお勧めします。詳しくはご紹介!8歳から出来る本格的自己催眠術導入セッションをご覧ください。
2.ディソシエイト
自分が怒りを引き起こしやすい状況を視覚イメージを使ってあらかじめリハーサルをします。この時に使うイメージはNLPのディソシエイトを使います。視覚イメージを使う方法はアソシエイトとディソシエイトに分けられます。
アソシエイトの意味は実体験です。イメージの中で自分の目を通してみる映像を思い浮かべることを指します。このアソシエイトは感情をとても強く想起させる効果があります。喜びや充実感を味わう時にはアソシエイトを用いますが、怒りのように強い負の感情はアソシエイトを使うにはあまり長い時間かけて行うのは向きません。
一方、ディソシエイトとは分離体験と言う意味です。まるで映像を撮っているように、客観的な視点から自分をイメージすることを指します。ディソシエイトは客観視出来るため、怒りのような強い負の感情を思い返しても、自らの感情を大きく変えることはありません。
ディソシエイトを使い、自分が怒りを感じるであろう事柄をイメージしておくことで、実際にその状態になったとしても怒りに駆られる可能性が大きく減っていくのです。
この方法は特に嫌な人と合わなければならないような時に効力を発揮します。例えば、いやな取引先に合うような時に事前にディソシエイトで光景を思い浮かべるといいでしょう。そして、ディソシエイトの中で事前に対処の自己会話を練習しておくと、実際に話をする時にも冷静に対処することが出来るのです。
特に、営業の方には必須のイメージトレーニングだと言えるでしょう。
3.ポジションチェンジ
この技術も営業の方には特におすすめしたい技術です。NLPのポジションチェンジと言われるこの技術は、自分の視点、相手の視点、中立的な視点で状況を捉えることで、より客観的に俯瞰して怒りを捉えることが出来るようになります。
NLPでは、自分や相手の視点のことを「知覚位置」といい、「第1の視点」(自分)、「第2の視点」(相手)、「第3の視点」(中立的な視点)で表します。それぞれ具体的に見ていきましょう。
3-1.ポジションチェンジの具体的なやり方
椅子を2つ用意します。どちらか片方の椅子に座ります。そしてもう一方の椅子を目の前に置きます。この時、目の前の椅子には怒りの対象となる相手を思い描いてください。
3-1-1.日ごろ言えないたまっていることを言う
目の前の椅子に相手が座っていると考え、日ごろ目の前にしては言えない不平不満を口に出して伝えます。
3-1-2.第3の視点で俯瞰する
次に、椅子から立ち上がり、両方の椅子の中間地点あたりに立ちます。これにより、自分が座っていた椅子と、対立相手が座っているとイメージしている椅子を見ることが出来ます。この状態になったら、先ほど自分が座っていた場所に自分のイメージを、対立相手が座っていた場所に対立相手を思い浮かべて下さい。そしてゆっくりと深呼吸をしてみて下さい。
3-1-3.第2の視点に移る
先ほど対立相手をイメージしていた椅子に座ります。ここでは、その対立相手になりきって考えています。相手の立場ではどのように考えているのかを感じてみて下さい。この時、相手が考えているであろうことがいろいろと浮かんでくるはずです。
3-1-4.第3の視点に戻る
自分と対立相手の視点から思考をした後に、また第3の視点に戻って両者を見ます。自分が伝えたいこと、相手の思っていることを自分の中に留めた状態で俯瞰していきます。そして、深呼吸を繰り返します。
3-1-5.第1の視点に戻る
1番初めに自分が座っていた椅子に戻ります。すると、自分が抱えていたわだかまりがとれ、対立相手とうまくやっていけるかも知れないという気持ちが芽生えてくることや、今まで振り返ることがなかった気持ちに気がついたりします。
ポジションチェンジをすることで、自分視点だけでなく、相手の視点と俯瞰した視点で物事を判断することが出来るようになります。そうすることで、思い悩んでいた怒りも実は対応方法があるのだという気づきにつながります。
実際のコーチングでもポジションチェンジはよく使われる技術となります。そのため、使いこなしていくと威力の大きさにびっくりするかもしれません。
まとめ
今回の記事では怒りのコントロールの方法についてお伝えさせていただきました。怒りは時と場所により性質が大きく変わって来るものです。
無意識化で押し殺してしまう時もあれば、瞬間的に怒りが出てしまうこともありますし、コントロールを意識しなくてはいけない時も出てきます。
今回の記事でお伝えした怒りをコントロールする方法はその時々の状況によって使い分けることで効果を最大限に発揮するものと考えております。とはいえ、すべてを初めから使いこなすということは難しいでしょう。
ご自身がどのような怒りを抱えているのか?またはどのようなシチュエーションで怒りを抱えやすいのか?を考え、ご自身にあった怒りのコントロール方法をまずは身に付けられてはいかがでしょうか?
実際にコーチングでも使われるスキルも多いため、どれかひとつでも使いこなしていければ、怒りに思い悩まされることや、ストレスで身体を壊すことなども大きく減っていくことと思います。
参考文献
NLPの教科書 前田忠志 実務教育出版
思いやりの人間関係スキル R・ネルソン・ジョーンズ 誠信書房
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