コーチングでも使えるミルトンエリクソンの催眠術入門10の技法

本日の記事は催眠術入門について書かせていただきます。

コーチングでも催眠の技術は比較的よく使います。特にクライアントのイメージの世界に入り込む時には意識をしなくても自然とトランス状態に導いているものです。

それは、コーチングの技術に催眠誘導の技術が体系的に組み込まれているからです。今回は催眠術入門としてコーチングの技術でも使うことが出来る催眠術に特化してご説明させていただきます。

まずは、コーチングの技術に使う催眠術的技法がどのようなものかをご理解いただいてから、技術的な話に移っていきたいと思います。

催眠術の技術はすべてを覚える必要はありません。どれかひとつを覚えて徐々に日常生活で使うことで必然的に誘導の能力が上がってくるでしょう。

しかし、相手をトランス状態に導くと言っても、相手を自分の思い度落ちにするという類のものではありません。どちらかというと、相手に自分が話をしているイメージの臨場感をより強く味わってもらい、相手にとっての問題や解決策を発見していくことにあります。

ようするに、相手の隠された能力をより引き出すために使う催眠術だと言えます。当然、コーチングでも利用している技術のため、コミュニケーション能力の向上に大きく役立つことは言うまでもありません。

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Ⅰ.伝統的アプローチとエリクソン派アプローチ

アプローチ

1.伝統的アプローチ

なぜ今回の記事で催眠術について書き出していくかというと、コーチングととても相性がいい技術だからです。というか、コーチングのいくつかの技術の中には催眠から派生した技術もあります。

とはいえ、「あなたはだんだん眠くなる」といったいかにもといった催眠を使うことはありません。このような催眠を伝統的アプローチと言います。相手の行動を断定して催眠に導くアプローチです。

2.エリクソン派アプローチ

コーチングで使う、催眠から派生した技術とはエリクソン派アプローチと呼ばれています。伝統的アプローチとの最も大きな違いは、伝統的なアプローチが断定口調であるのに対し、エリクソン派アプローチが許容語を使うということです。

エリクソン派アプローチの例

例を上げてみましょう。

「あなたはだんだん眠くなるかもしれませんし、眠くならないかもしれません。それは私にはわかりません。」

このように、相手の行動を断定することなく、相手の行動を相手にゆだねる話し方が特徴です。

3.多くの人は自由を侵害されることを無意識的に避ける

多くの人は他人に何かを決めつけられると自由を侵されたと感じ、反発をしてしまうものです。よって伝統的アプローチで催眠にかかる人は被催眠性の強い被験者に限られてしまうというデメリットがあります。

一方、エリクソン派アプローチではすべての人は催眠にかかるということを前提として作られています。そのため、多くの人から反発されてしまうような誘導方法ではなく、どのような人にでも受け入れられる誘導方法に特化しています。

それが相手のどのような行動も許容するという姿勢です。

4.コーチングも相手の行動を許容することからはじまる

コーチングも相手にスポットライトを当て、相手の行動をすべて許容することを前提としています。背景にある根底となる考え方が同じであるからこそ、エリクソン派アプローチとの相性がいいのだと言えます。

催眠療法をコーチングに取り入れることでの最大のメリットは臨場感の向上です。相手の話すイメージを臨場感を持って体感してもらうことで、相手はより深く自分の話に入っていくことが出来るのです。

Ⅱ.ミルトンエリクソンの催眠術入門

催眠術入門

この章では、エリクソン派アプローチの創始者ミルトン・エリクソンの催眠療法についてお伝えしていきます。エリクソンは自らの催眠療法を利用アプローチと呼んでいました。相手が何をしてもその人のすべてを利用するという意味です。次からは、エリクソンの催眠療法の原則を順序立ててご説明させていただきます。

1.許容・関心・観察・利用

①許容

相手の話をすべて受け入れることを指します。例えば、イメージが浮かばないことで相手は焦っているかもしれません。そのように感じた時は、「イメージが鮮明に浮かぶこともあれば、イメージが浮かばない時もあります。」と言えば、相手はイメージが出来なくても不安に駆られることはなくなります。相手の状態を許容することで相手は安心感を持ち、自然と催眠状態に入っていくことが出来るのです。

②関心

相手に関心を持つことで相手に意識の焦点を向けます。コーチの重要な資質として好奇心があります。関心も同じく相手に好奇心を持つことで、相手にスポットライトを浴びせるのです。そして、相手がどのような人なのかをわくわくしながら引き出していくものだと言えます。

③観察

エリクソンは観察を非常に重視していました。相手の反応や、行動、しぐさや表情、声の大きさやペースなど相手から発せられる情報を観察することで、どのような催眠が相手にとってすんなり受け入れられるかを観察を通して導き出していったのです。

④利用

クライアントから得られた様々な情報を利用して、クライアントに適した催眠を作り上げていきます。

2.喚起と暗示:自然アプローチ

エリクソンの催眠の特徴は、クライアントに外部から術者の考え方を与えようとはせずに、クライアントの体験を内側から呼び寄せることにありました。

エリクソンの催眠は解決思考の催眠だと言えます。外側から人に教え込むのではなく、相手の内側から自然な体験を広げ、方向性を見出していくのです。

まさに、コーチングそのものといっても過言ではありません。

①人は自然の力を備えている

エリクソンの信条です。人は本来尊敬に値する自然の力をリソースとして備えているのだから、その力を利用できると考えていました。その力をもってすればトランスに入ることも簡単に出来ますし、自らが限界だと感じていることすらも軽々と越えていくことが出来ると考えていたのです。

②与えられた指示では人は抵抗をしめしてしまう

エリクソンは従来型の伝統的アプローチでは被催眠性の高い一部のクライアントしかトランス状態になれないことに焦点をあてていました。なぜ、その他大勢の人は催眠に入れないのかについてエリクソンが出した答えは、無意識の抵抗です。人は自分と考えの違う意見を無意識的に除外してしまう傾向があることをエリクソンはつかんだのです。

③解決思考

解決思考の催眠とは、外側から人に教え込むものではありません。クライアントの内側からなんらかの体験を喚起して自分の価値観や信念、主義主張を本人が見つけていくものなのです。その人の内側にあるリソースに目を向けてもらい、その人自身に問題の解決策や、目標を呈示してもらうことが解決思考の催眠だと言えます。この考え方はコーチングの考え方そのものです。

3.前提・含意・文脈的意図

エリクソンが使う前提・含意・文脈的意図にはこれから紹介する6つの方法があります。前提とは催眠に入るための前提条件です。含意とは催眠に誘導するための示唆を暗示しています。文脈的意図とは催眠に入る時のスイッチのようなものです。

深く考えると難しいものですが、コーチングでも通常に普通に使っている技術です。わかりやすく伝えると、理想のゴールにたどり着いたところをイメージしてもらい、そこへ到達するために今どのようにしていけばいいか?ということを考えてもらうということです。

そうすることで自然とトランス状態に入っていけます。

①望ましい方向に導くために2つ以上の選択肢を提示する

「Aがいいでしょうか?Bがいいでしょうか?」

上記の例のように2つ以上の選択肢を挙げて、クライアントに選択の幅を示します。こうすることで、クライアントには指示を出されたという不快感が生じることはなくなります。

②これから起きることについて述べる

「これからイメージの世界に深く入っていくかもしれません」など、あらかじめこれから起こるかもしれない出来事を伝えておくことで、今後の動向を示唆します。

③進行中の出来事について述べる

「深く入っていますね。」

相手がどのような状態にあるのかを伝えることで、相手の意識はよりトランス状態に入っていけるようになります。

④今おこったことについて述べる

クライアントの意識が戻ってきた時に、「いかがでしたか?」などと声をかけることで、クライアントにイメージの世界を振り返ってもらいます。そうすることで、クライアントのうちから問題の解決策や、目標に向けてどのように行動するべきかが湧き上がってくるのです。

⑤~の前に、~の間に、~の後に

例えば、「イメージの世界に入る前に」という言葉をかければ、イメージの世界に入った自分を想像するでしょう。これが暗示となります。~の間にでも、~の後にでも同様の暗示となるのです。

⑥気付き

「~を気づいているかどうか私には分かりませんが」などのように相手に意識を向けてもらいたい方向性に誘導します。

⑦程度

「まだ~しないで下さい」「すぐに~してほしいとは思いません」など、相手の行動を規制するのではなく、時間をある程度調整することで催眠に誘導していきます。

4.マッチング

マッチングとは自分の行動や言動などを相手に合わせていくことです。

①ミラーリング

ミラーリングとは相手の動きや動作、表情などを鏡で反射したかのように同じ動きをしていくことをさします。特に、相手の身振りや手ぶりがダイナミックに動いてきた時などに同様の動きをすると同調効果が高まります。

②クロスミラーリング

相手の行動の特徴に合わせて自分の動きも変えていくことをクロスミラーリングと言います。例えば、相手が早口だった場合、相手が一呼吸打つたびにゆっくりと相槌を打つのもクロスミラーリングと言えます。このように相手の行動に合わせて、自分の行動を変えることで、相手は次の動作に出る前にこちら側の行動を確認してから動き出すようになるのです。

③ペーシング

相手の声のトーンや呼吸、話すペースやリズムなど相手のペースに合わせていくことをペーシングといいます。ミラーリングが動作を中心に同調するのに対し、ペーシングはペースを中心に同調していきます。

④リーディング

ミラーリングやペーシングで相手との同調が強くなってくると次第に、相手が自分のペースに合わせてくるように振舞います。この状況になると相手との間にとても強い結びつきが出来てきます。

関連記事としてNLPとは何か?理論から実践編まですぐに使える4ステップも併せてご覧ください。マッチングの技術に関してより詳しく説明しております。

5.描写的マッチング

相手の動作やしぐさについて言葉に出して説明をすることです。

「今、あなたは座っていますね。そしてペンを片手に取っています。また、首をかしげて汗を拭きとりました。そして、第一ボタンを広げましたね。」

などと、こちら側から受け取る相手の動作を相手に伝えていく方法です。この方法を用いることでの得られる効果は主に2つです。

①ラポールを築ける

ラポールとは信頼という意味です。描写的マッチングは相手個人の体験に立ち入りすぎないため、相手から信頼を得られるという効果があります。

②トランスに入りやすくなる

トランスに入るには、注意集中の狭まりという定義があります。相手の身体や周囲の環境について話をすることで、その人の注意集中の焦点を狭めてトランスに入りやすくなる効果があります。

6.許容的で力を与える言葉

どのような言葉を伝えても、クライアントの心の中では別な事を考えているかもしれません。だからこそ、限定した言葉ではなく、クライアントの立場を許容した言葉を伝えることが効果的だと言えます。

許容的な言葉の例1

どういう事かと言いますと、「あなたは眠くなる」と言われれば、眠くならない人には「眠くならねーよ」と思われてしまうわけです。しかし、「あなたは眠くなるかもしれませんし、眠くならないかも知れません。私には分かりません。」といえば、どうでしょう?

クライアントは自分の考えを断定されていないため、この言葉を否定する理由はありません。許容的な言葉というのはこのように相手の感じていることや、考えていることをも許容できる言葉をさします。

許容的な言葉の例2

「あなたは気持ちよく椅子に座っていることも出来るでしょうが、必ずしも気持ちよさは必要ありません。」

この言葉も許容的な言葉です。気持ちよく椅子に座っていることが出来ていないクライアントであれば、気持ちよく座る必要はないという言葉を聞いて、許容された感覚を受けます。そうすることで、心の中での反発心はなくなります。

7.分割

分割のスキルはコーチングでもつかいます。このブログでも分割のスキルについてはいろいろとお伝えさせていただきました。

分割のスキルとは心をある特定の形に分割していくことです。当然、心という目に見えないものを取り出して分割することは出来ませんから、意識として分割していく姿勢を持つという事です。

①意識と無意識の分割

催眠では特に意識と無意識の分割を利用します。例えば、意識上ではトランスに入るということを疑っていても、無意識的にはトランスに入ることを受け入れているという暗示をかけることで、トランスにかかりやすくなっていきます。

誘導の例

意識的には、トランスに入ることがどんなことなのかをあなたは実際に知らないかもしれません。無意識の心は、すでにトランスに入っていきながら、たくさんの体験をしているかもしれません。意識的には、そこに座ってこれがトランスに入ることなのかなと不思議に思っているでしょう。そして、もうすでにあたなの無意識はトランスに入るための手助けを始めています。

ミルトンエリクソンの催眠療法入門より

解説

上記の誘導の例では、意識と無意識を意図的に分けながらクライアントに暗示をかけています。そして、意識に語りかける時にはより強調した声で、無意識に語りかける時にはささやくような声でと切り替えて行きます。

そうすることで、意識と無意識に境界が設けれれるため、より暗示にかかりやすくなります。

②現在と過去、未来の分割

現在と過去や、現在と未来を区切ることで、時間を分割してとらえます。時間の分割はコーチングの基本的なスキルと言ってもいいほど多用するスキルとなります。未来や現在に意識を持っていくことで、現在の自分を未来や過去の自分の視点からとらえることができるのです。

誘導の例

「すべての目標を達成している将来の自分を思い描いてください。その将来の自分から今のあなたを振り返ったらどのように声をかけてあげたいでしょうか?」

「過去にもっとも充実していた瞬間を思い描いてください。それはいつですか?どのような時ですか?今おなじ気持を抱くには何をしていけばよいのでしょうか?」

解説

今と未来、今と過去を分割して分けることで現状を客観的に分析できます。そして、どうしたら、そのような状況になるのか?ということを客観的な視点を持った状態で本人が考えていくことが出来るのです。分割することでトランスに入っているからこそ、今の自分を客観視することが出来てきます。

8.凍結

分割を補足する技法が凍結です。凍結とは、つながっていない二つの物を一緒に結びつけることをさします。

①接続詞

「そして」を使い、ふたつの言葉を結び付けていきます。「あなたはリラックスしています。そして、あなたはトランスへと入っていけることが出来るでしょう。」

②随時性の暗示

「~すると」「~する間に」「~するとき」を使います。

随時性の暗示の例

「あなたがリラックスしている間に、あなたはトランスへと入っていけることが出来るでしょう。」

③随時性の凍結

「こうしていると、ああなります」「こうしていないと、ああなりません」「こうしていると、ああなりません」という種類があります。

③因果的凍結

「あることが起こります」と要求したりすることです。この凍結は許容的な言葉ではないため、人によっては指示を出されたと反発を招いてしまう可能性が高い言葉です。よって、抽象的な表現を伝える時に使用するべき言葉です。

因果的凍結の例

「トランスの中にいるので、無意識の心にたくさんの創造的な考えがもたらされます。」

このような抽象的な表現の場合、クライアントは因果的凍結を使われたとしても、概念が抽象的すぎるため、支持を出されたと受け取ることが出来にくいでしょう。

9.散在

散在とは字のごとく暗示を言葉の中に散在していれていくことで、相手の無意識に暗示を浸透していく技術です。

散在の例

「さて、トランスに入ることをあなたが意識的に信じているかどうか私にはよくわかりません。そして、またどのくらい深いトランスに入り、どのくらいはやくトランスに入るのか私には見当がつきません。」

ミルトン・エリクソンの催眠療法入門より引用

10.混乱技法

正反対の言葉を配置して意識の心を混乱させます。そして、混乱を引き起こすことでトランスに導いていく方法です。

混乱技法の例

「トランスに入るには正しい方法がありますが、誤った方法でもトランスに入れます。誤った方法でトランスに入るには、正しい方法を行わなければならないという意識さえ必要ありません。正しくトランスに入るには自然と心がリラックスしている時ですが、心がリラックスしていない時でも誤ったトランスではありません。」

解説

今回の例では「正しい」と「謝った」という正反対の言葉を交互に会話に入れながら、意識上の混乱を引き起こし、トランス誘導に導く内容となっています。

まとめ

催眠術入門という事で今回の記事ではミルトンエリクソンの手法の一部を紹介させていただきました。エリクソン派アプローチは伝統的アプローチと異なり、催眠術というよりはコーチングに近い技術だと言えます。この催眠術の技術をひとつ身に付けるだけでも他者とのコミュニケーションの大きく貢献することは間違いありません。

参考文献

ミルトン・エリクソンの催眠療法入門